2023.05.10

第4章 事例調査(3)

4.2 テキストマイニング分析

視察調査で訪れたベトナムのTopas Ecolodge及びTopas Riverside Lodgeについて、筆者が感じた地元民族との関わりの濃さやガイドの存在の大きさなどを他の消費者も感じているのか、視察調査で分かった両ロッジの特徴を消費者の意見をもとにさらに補強するため、補足的な調査として口コミのテキストマイニング分析を行いました。分析対象は、両施設に寄せられた口コミであり、それらをKH Corderを用いてテキストマイニングを行いました[1]。口コミはトリップアドバイザー(https://www.tripadvisor.com)に寄せられているものを対象とし、投稿日が新しいものから順に数の上限を150として口コミを抽出しました。なお、口コミの抽出は2022年9月に実施しました。投稿者の国籍は限定しておらず、英語や日本語、フランス語など様々な言語が混在しています。

分析については以下の手順で実施しました。まず、口コミをトリップアドバイザーのページから抽出しました。その後日本語訳をし、表記揺れや誤字の修正などデータのクレンジングを行いました。次に、KH Corderにデータを取り込み、強制抽出する複語の指定や分析から外す語の選択を行いました。具体的には、「エコ」と「ロッジ」などを分けてではなくひとつの単語「エコロッジ」として分析するように指定するなどしました。その後、抽出語リストを作成し、頻出度の高い語句を確認しました。また、その語句がどのような文脈で用いられているのかするため、語句同士の関係性を表す共起ネットワーク図を作成しました。分析した口コミ数は、Topas Ecolodgeが150件、Topas Riverside Lodgeが53件です。分析した結果が図10から図13です。

まず、Topas Ecolodgeに見られる傾向として、「景色」や「プール」、「ロケーション」といったロッジの特徴的な立地や施設を評価する口コミが多いことが挙げられます。また、地元の村出身のスタッフが働いていることや地元民族との関わりがあることから「地元」も多くなっています。「村」「ガイド」「ハイキング」の共起もあり、アクティビティについての言及と分かります。Topas Riverside Lodge では「村」「地元」の頻出度が非常に高くなっています。Topas Ecolodge同様、地域社会と密接にかかわっていますが、特にTopas Riverside Lodgeについては施設が地元の村の中にあり、ロッジでの体験は地元少数民族の女性に徒歩で宿まで案内してもらうところから始まるなど、より密接であるといえます。共起ネットワーク図を見ても「村」「人里離れた」「ロッジ」「川」の共起があり、ロッジの立地として周辺環境や村に関する口コミがあると分かります。また、Topas Riverside Lodgeでアクティビティに関すると思われる口コミとして「ガイド」「ハイキング」「ツアー」などがあり、いずれも強い共起関係が表れています。一方、両施設ともに環境に配慮した運営に関する口コミは抽出語リストや共起ネットワーク図からは見て取れません。これは、環境に配慮した取り組みが、排水システムや食べ残しの処理方法など、ゲストと直接関係のないバックヤードで行われているということ、また、ディスペンサーでのシャンプーの提供等に関してゲストは不満を抱いていないことなどが推察されますが、ここで断言することはできません。

以上の結果から、地元との関わりをはじめ、ロッジが大切にしていることや伝えたいことを消費者は感じ取っており、またそうしたことが消費者の感想や滞在で印象に残っていることとして実際に挙げられていることが分かりました。

図10 Topas Ecolodge頻出語リスト



図 11 Topas Riverside Lodge頻出語



図 12 Topas Ecolodge共起ネットワーク図



図 13 Topas Riverside Lodge共起ネットワーク図



 

[1] 樋口耕一(2020):社会調査のための計量テキスト分析-内容分析の継承と発展を目指して,ナカニシヤ出版