5.3 アンケート調査
続いて、エコロッジとして評価できると思われる取り組みの達成度を数値化するため、アンケート調査を実施しました。調査対象はインタビュー調査と同じ12の施設であり、アンケートの項目は、3章で取り上げたUnique Lodgesが各施設の取り組みとして紹介していた項目をベースに作成し、2021年9月実施のインタビュー調査によって挙がった地域ならではの項目を加えた約40項目で実施しました。アンケートはGoogle Formsを用いて実施し、2021年12月24日から2022年1月4日の約2週間で12軒すべての事業者から回答を回収しました。結果を図16に示します[1]。なお、回答は全設問複数回答で実施しています。調査票については巻末に添付します。まず、全体として達成度が高い結果となったのが、「水資源」「地域の食」「地域の業者」「災害時の対応」「地域の雇用」といった内容でした。特に、水資源については、雪深い地域性が表れており、水源が宿の近く半径5km以内にある割合が非常に高く、お客様に新鮮な水を提供していると分かります。そうした豊かな水は蛇口から飲むことができることをすべての宿が積極的に示しています。通常、蛇口から出る水を飲用することに抵抗があるお客様のために、自動販売機にて飲用水の販売を行うことが多いのですが、今回調査した施設の中には施設内に自動販売機を設置していない宿もありました。
一方、いまだ取り組みは十分であるといえない結果となったのが、「廃棄物」や「エネルギー」といった環境に負荷の少ない営業の面です。ごみの量やエネルギーの消費量などを定期的にチェックしている宿はほとんどなく、特に廃棄物量については週に1回している宿が1軒あるのみという状況でした。また、食品廃棄物の再資源化や環境に配慮したアメニティの導入、温泉や井戸水といった自然エネルギーの活用など、旅館ならでは、温泉地ならではの項目に関しても改善の余地が多大にあることが明らかになりました。他にも、エコロッジの重要な要素の一つであるアクティビティについて、自然体験プログラム及び文化体験プログラムのどちらとも施設によって実施状況はまちまちであり、実施していない宿もありました。
5.4 TIMELESS YUKIGUNIでのエコロッジ実現可能性
インタビュー調査及びアンケート調査を実施した結果、調査対象の12施設について、雪深い温泉地であるという地域の個性を自覚し、それらを活かすことに前向きな姿勢があることが分かりました。これらのことから、雪国観光圏の理念である「100年後も雪国であるために」という思いは、各施設において実行されている共通の考えであると改めて感じられます。一方で、そうした取り組みはさらに実施していく余地があることも分かりました。全体としてみた時に、環境に配慮した取り組みが不十分であること、エコロッジの重要な要素の一つであるアクティビティの実施が施設によってまちまちであり、毎日実施している施設は半数以下であることなど、TIMELESS YUKIGUNIとしてはエコロッジの要件となる取り組みの度合いにばらつきがあるという結果でした。しかし、だからといって日本でのエコロッジ実現が不可能であると判断するのは時期尚早です。アンケート結果を見ても分かるように、全体として達成度が高いとは言えないものの、高い達成レベルを実現している宿があるのも事実です。各施設によってばらつきはあるが、12施設を牽引するリーダー的な存在がいるため、エコロッジとしての取り組みを進めることは不可能ではなく、今後さらにエコロッジとしての魅力をブラッシュアップできると期待されます。つまり、日本でのエコロッジ実現についてはその可能性が十分にあるといえます。
[1] 回答の選択肢について、達成レベルを表すアルファベットを付し、選択肢の内容に応じたアルファベットへと割り振っている。そのため、設問によってはアルファベットに該当するレベルの選択肢がないものもあり、当該選択肢のセルには斜線を入れている。