「民泊新法」と「地域おこし」
住宅事業基本法案(民泊新法)が閣議決定されて半年。都市部では不動産投資としての民泊バブルが続いていていますが、インバウンド向けの宿泊施設は供給過多に陥りつつあるという見方もあり、冷静に判断していかなければならないところかと思います。いっぽう、都市部から離れ有名観光地ではない地域となると民泊新法をチャンスと捉えている方が多いことに気づかされます。
先日、総務省「地域おこし協力隊の起業・事業化研修」の宿泊・観光ビジネスにおいて講師をさせて頂いたのですが、参加者の皆さんの一番の興味は、旅館業と民泊新法の比較表でした。表に記載されている項目は、行政への手続き、許認可の方法、営業日数制、客室床面積、住居専用地域での営業、集合住宅での営業、賃貸住宅での営業、等々…。
事実、協力隊へのアンケート結果(平成28年度)によれば、起業したい分野の第1位が宿泊業だというのです。その後、地域づくり、飲食店、6次化産業へと続きます。後継者不足に悩む既存の旅館や民宿にとっては信じられない結果かもしれませんが、「起業」つまり経営者になれる道さえあれば宿泊業に未来を感じている若者は少なくない!ということが分かります。
しかしながら、よくよく協力隊の皆さんのビジネスプランを聞いてみると、誰も宿泊業1本で起業しようとなんて思っていません。農業やテレワークをしながらの兼業、飲食店やコワーキングスペースを備えた施設など、既存の旅館業の泣き所である季節や曜日繁閑を柔軟なアイディアで乗り越えようとしています。「宿泊業をやりたい!でも、そんなに手数もないし資金もない。だから、民泊新法はありがたい。」というところでしょうか。
いかに初期投資を抑えながら煩雑な旅館業法の許可申請などをせずに宿泊業が開始できるか?という点で、民泊新法は魅力的に映るようです。家主不在型の管理者として複数の物件を管理するというプランを立てる方もおられました。
空き家の有効活用という地域の命題をクリアしつつ、安心安全を担保できるIOTサービス等を使用できれば、地域での民泊新法は使いようでしょう。
並行するかのように、旅館業法の緩和も議論されていますので、来春の施行までその辺りも注目ですね。
(山田祐子)

総務省「地域おこし協力隊の起業・事業化研修」宿泊・観光ビジネス班